物語

小説「世界」を書いてみて

小説「世界」の連載、第一章11回が終わりました。最後一週空いたものの毎週かけたのは、ぼくには大きくて忙しい生活のほんの隙間に「マイワールド」に戻れることができる楽しみの時間でした。もともとアニメーションを想定した映画のシナリオ用に練ってきた…

世界 11.下界の人に覆い尽くされる世界

下でなにか轟音がした。少女は目覚め、また目をつぶった。 しかし数秒たつと、またドドドという強い地響きがして、飛び起きた。 この世界に何が起きてるのだろう? その地響きは、少女が住んでる世界の幻想のような危うい脆さを吹き飛ばし、現実感のある確か…

世界 9.羊飼いの少年が見ている世界

屋敷での生活が長引くほど、少女の現実感は薄れてくように感じた。薄れてくごとに、少女はいろんな幻想を見るようになった。 一番多かったのが、この大きな屋敷が音もなく崩壊していく映像。寝ているとき、彼女と食事をしているとき、夜中にトイレに行こうと…

世界 8.屋敷の外側の世界

下の世界の住人たちは、嵐の日を除き、ほとんど毎日一人はやってきた。屋敷の外側では、週に二度は嵐が吹き荒れた。そしてその間をぬうように、下の世界の人々はやってくるのだ。 下の世界の人々は基本的に歪んでいた。心だけでなく、それにあわせて体も歪ん…

世界 7.屋敷の内側の世界

彼女との生活が長くなるほど、少女の世界は重くなった。重いけれど、なぜだか透明だった。 なんにも考えなくてもよい気楽さがあるのだ。すべて彼女がやってくれる。 しかしその分自由が失われていく感じがしていた。少女が好奇心いっぱいに窓から屋敷の外の…

世界 6.下の世界が来る人の、心を縫う人

彼女の仕事は、人の心を縫うことだと言った。 はじめはなんのことを言ってるのか、イメージがつかめなかった。だって、人の心って縫えるものなの? しかし外から人がやってきて、自分の服をはだけて自分の心をみせたときに、なるほどこういうことなのだと理…