世界 2.ひとりぼっちの世界
わたしが瞑想に落ちていた空に浮かぶ小さな島。
その島でひとりぼっち、5歳くらいの少女が、草から草へ飛び跳ねて遊んでいる。
「ばった、ばった」
少女はひとりぼっちだが、島の中央にある菩提樹、草木たちに見守られている。
そして大きなエレファント。
「あっ、エレファント!」
エレファントはある時間になると、この島へどうやってかやってきて、ある時間になると去って行く。毎日、毎日。
少女はエレファントのところへ走って行き、大きな足に顔を埋める。
「エレファント~」
エレファントの瞳はとてもやさしく、少女を映し出す。
深くてなごんだ愛がともる。
少女はエレファントの長い鼻をつかんで、遊んでと催促する。
エレファントは鼻を大きく動かし、少女を空中にグルグル回す。
少女はきゃっきゃと奇声をあげて喜ぶ。
しばらくすると、陽がかげってきて、あたりが暗くなる。突如に。
「あっ!」
少女が島の端を見ると、さっきはなかった「家」があらわれている。
かわりにエレファントはなんの知らせもなく消えている。
少女はひとりぼっちじゃない世界を知らないから、「満たされてない」を知らない。
エレファントや、家がやってきてくれるから、心配ないと思い込もうとしている。
けれど、一日でこの夕暮れだけは、こころにぽっかり穴があいたように悲しくなる。
「うわーー」
少女は自分の気持ちをどうすることもできなくて、家に向かって走り出す。
草木たちが泣く。
家につき、ドアを開けて、中から閉める。
右側の小さなベッドがある寝室に行こうとするが、左側のいつも閉まっているドアを
ためしに回してみる。
「やっぱりか」
ドアには鍵がかかっている。
少女は残念そうに寝室に入り、中からドアを閉める。
明日も世界は同じだと信じるように。