シネマビュー001 「天国の日々」

ツリー・オブ・ライフ」で、キリスト教的涅槃の世界を、一大スペクタクルで描いたテレンス・マリックの作品を1978年までさかのぼってみると、「天国の日々」という隠れた名作にあたる。
天国の日々」でぼくがもっとも素晴らしいと思ったのは、「嫉妬」という強烈な感情の見事なまでの表現だ。
この作品を観て、カタルシスというか、感情の昇華といえるものをぼくは感じた。
そしてこの強烈な嫉妬をする男チャックを演じた俳優が、「トゥルー・ウエスト」を書いた劇作家のサム・シェパードだと知ったときは驚きはてた。

話は20世紀初頭のシカゴからはじまる。
現代社会でうまくやっていけない3人の放蕩者(ビリー、恋人のアビー、妹のリンダ)が、テキサスの天国のような景色の農場にやってくる。
そこで農場主のチャックがアビーに求婚し、遺産目的にビリーは結婚を了承するが…というシンプルなストーリーだ。

その中で一度は農場を去ったビリーが戻ってくるのだが、それを知ったチャックの嫉妬の炎がついたと同時に、農場にイナゴの大群が押し寄せる。
まさにバイブル的な描写だが、この圧倒されるイナゴが凄まじい。
撮影監督はトリュフォーの作品を撮ってきた名匠アルメンドロス。
人工的な光を避けて撮ったということだ。

クライマックス、チャックがビリーを殺すかと思ったところ、逆にビリーがチャックを殺してしまう。
3人の放蕩者は農場から逃亡し、警察に追われ、チャックは撃ち殺される。
なんでこんなクライマックスになったか考えたところ、アメリカン・ニューシネマの時代の流れだなと思った。
現代社会に押し殺されるはみ出しものの若者たち。
最後に残るのが女性たちなのも面白かった。

ぼくにとって、ものすごく印象に残ってる作品だ。
それはおそらく心の深い何かに触れたからだろう。
是非いつかチャックみたいな役を演じてみたいと欲求する。

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